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暗黒物質(ダークマター)ってなに?いつ発見された?正体は?

近年の研究により星やブラックホール、銀河を形成している物体は、全宇宙に存在する物質の僅か5%に過ぎないことが分かりました。そして同時に残りの95%が私達には見ることも、解明することもできない物質でできていることも判明しました。

この理解し得ない95%のうちの27%は暗黒物質・ダークマター、68%は暗黒エネルギー・ダークエネルギーと名付けられたのですが、現時点では目視で観測ができないため、この2つの実態を完全に把握することは困難と考えられています。では何故、天文学者達は観測できないものの存在に気が付いたのでしょうか?

近年の研究で導き出された仮説などを含めて、ダークマターについて解説していきます。

 

ダークマターはいつ発見された?

1933年、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキー(1898年~1974年)は、地球から3.2億光年離れた場所にある“かみの毛座銀河団”を観測しました。かみの毛座銀河団は3000個以上もの銀河が、直径約2000万光年程の領域に集まった銀河の集団です。

ツビッキーは銀河の運動と明るさという2つの方法で、この銀河団の質量の計測を試みました。

銀河は銀河団全体が質量を生み出す力=重力によって引っ張られ、銀河の動きが速いほど、銀河にかかる重力は大きいと考えられます。そうでなければ銀河は銀河団の中に留まることができず、運動によって銀河団の外に飛び出していってしまうからです。この理論を利用して、銀河の運動量から求めた質量を“力学質量”といいます。

また星の明るさと質量には関係があり、明るい星ほど質量が大きいという特性を持ちます。明るさから推測した銀河の質量は“光度質量”と呼ばれ、通常であれば力学質量と光度質量は同じ値になるはずです。

しかしかみの毛座銀河団は、光度質量に比べて力学質量の方が圧倒的に重かったのです。ツビッキーは力学質量のデータを信じ、かみの毛座銀河団は見た目の明るさよりも多くの質量を持っている、つまりかみの毛座銀河団には見えない物資があり、その働きによって銀河星団にとどまっていると結論づけました。

この見えない物質は“ミッシングマス(失われた質量)”と呼ばれ、後にダークマターと呼ばれるようになりました。

 

銀河の回転運動の不思議

ツビッキーがかみの毛座銀河団を観測してから40年ほど経った1970年代、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービン(1928年~2016年)は地球からおよそ250万光年離れたところにある銀河“アンドロメダ銀河”を観測している最中に、奇妙な現象を発見しました。

アンドロメダ銀河は地球の存在する天の川銀河同様、上の画像のように円盤のような形をした渦巻型の銀河であり、銀河の星々や星間ガスは回転しています。ルービンはアンドロメダ銀河のガスが回転する速度を計ってみました。

ガスの運動する速度は“ドップラー効果”を応用した方法で行われ、音と同様に観測者からの距離によって光の波長が変化することを利用して計測されました。またルービンはこの時、1箇所ではなく銀河の中心から様々な距離にあるガスの回転速度を調べました。

アンドロメダや天の川のような渦巻型の銀河は中心部に星が密集するため、中心に近いほど明るくなる、つまり中心に近くなる程重力が強くなるはず、と考えられていました。そしてその理論に従えば渦巻型の銀河のガスの回転速度は中心の近くで早くなり、外縁部では遅くなるはずです。

しかしルービンの観測では、銀河の中心部も外縁部も回転速度はほとんど同じという結果が出たのです。この結果、光では観測できない何らかの物質が銀河を包むように大量に分布し、重力を補っているという可能性が導き出されました。

ツビッキーがミッシングマス(ダークマター)の存在を示唆した頃には観測技術が未発達でした。そのためミッシングマスは観測結果の誤りで生まれたものとする意見も多く、いつしかその存在は忘れ去られていきました。

しかしルービンの観測が発表されたことにより、ミッシングマス、つまりダークマターの存在が再び脚光を浴びるようになったのです。

 

ダークマターの特徴

ダークマターが存在が発見された当初、その正体は全てが謎に包まれ、不明でした。そこから長い間の観測と研究を経てダークマターの候補とされていた物質はふるいに掛けられていき、ダークマターに必要な条件も明らかになっていきました。

以下にダークマターの正体である物質に求められる4つの特徴を紹介していきます。

 

1.どんな波長の光も出さない

ダークマターは現在開発されているどんな望遠鏡を使用しても見ることができません。このことから、ダークマターはどのような光も発することも、また吸収することもないと考えられています。

ダークマターは名前のイメージから暗闇や暗黒を連想させますが、実際は無色透明な存在であり、可視化することができないとれてているのです。

 

2.どんな物質も通り抜けることができる

ダークマターは他のどんな原子やダークマター、つまりどんな物質ともほとんどぶつかることがありません。地球や人体をもほぼすり抜けていくと考えられています。ぶつからないということは、ダークマターは電気を帯びた粒子でできていないのではないかとも考えられるのです。

 

3.宇宙誕生直後は、ほぼ速度がゼロの冷たい物質であった

ごく初期の宇宙で最初の星や銀河が形成された速さを考えると、その時点で既にダークマターによる重力の影響があったと考えられます。ほぼ速度がゼロのダークマターの集合体こそが銀河の種になったと考えられているのです。

またダークマターが冷たくなかったら自らの重力のみで集まるのが難しいため、銀河が創られることもなかったと考えられています。そのため、ビッグバンの直後には既にダークマターは存在し、現在の宇宙を創ったと考えられているのです。

 

4.目に見える物質の5倍の総質量がある

宇宙におけるダークマターの質量は大変大きいと予測されています。ダークマターは、銀河などの目に見える物質の5倍~6倍は存在していると考えられているのです。

 

ダークマターの正体と考えられているもの

上で紹介した4つの条件を満たすものとして、現在2つの粒子がダークマターの正体なのではないかと考えられています。それがWIMPsとSIMPです。

 

ダークマターの候補・WIMPsとは?

現代の理論によるとダークマターは、弱い相互作用をする重たい粒子で構成されているのではないかと考えられています。この仮説上の粒子はWeakly Interacting Massive Particlesの頭文字を取ってWIMPsと呼ばれ、検出を目指した研究が続けられています。

物質との相互作用が非常に弱く、地球すらも貫通してしまう粒子として、日本のスーパーカミオカンデの観測で質量が確認されているニュートリノ。当初は、このニュートリノがダークマターを構成しているという説が有力視されていました。そのため、ニュートリノがダークマターの謎を全て解明できるとも考えられていました。

しかし観測によって予測されるニュートリノの質量では、ダークマターの全てを説明するには全く足りないことが判明したのです。ニュートリノの質量は電子の1000万分の1以下であり、あまりに小さすぎたのです。

そこで新たにダークマターの正体の候補として、超対称性粒子の一つである“ニュートラリーノ”が挙げられました。超対称性粒子とは素粒子理論の一つである超対称性理論から存在が予言されている粒子で、この理論によると、全ての素粒子は自らと少しだけ違うパートナーの超対称性粒子を持つと考えられています。

ニュートラリーノはフォトンなどのパートナーと考えられている超対称性粒子で、電子よりも5桁~6桁も質量が多いと予想されています。超対称性粒子は未発見ですが、もしこの理論が正しかった場合は宇宙を統治する4つの力のうち、重力以外の3つの力、つまり強い力、弱い力、電磁気力を統一的に理解できるのではないかとも考えらえているのです。

ちなみにニュートラリーノとニュートリノは名前が似ていますが、全く関係のない別の粒子です。ニュートリノの超対称性粒子はスカラーニュートリノ、Zボソンとフォトンの超対称性粒子のフォティーノとジーノなどの総称が、ニュートラリーノとされています。

さて、WIMPsにはもう一つ候補があります。それは地場の影響でフォトンに変わる性質がある“アクシオン”という極めて軽い粒子です。

アクシオンはクォーク間の強い力を説明する量子色力学に関連して存在が予言されている粒子で、質量は電子の1000億分の1~1兆分の1程度と考えられています。しかしその軽い質量を補う程の膨大な量が存在すると考えられているため、ダークマターの正体として有力視されているのです。

現在はこのニュートラリーノとアクシオンがWIMPとして考えられていますが、どちらも実験では存在すら確認できていません。

 

ダークマターの候補・SIMPとは?

ダークマターは、私達の身の回りにある“普通の物質”の5倍~6倍の質量を持ちます。この条件を満たせる素粒子としていくつか候補が上りましたが、なかなか決定打となるものが存在しませんでした。

しかし2015年に東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙機構の村山斉機構長(1964年~)のグループが、新たなダークマター候補・SIMP(Strongly Interacting Massive Particles、強い相互作用をする重い粒子の頭文字を取った名称)についての理論を発表し、注目を集めているのです。

理論的に導かれた粒子であるSIMPは、実際に存在するかは未だ確認されていません。しかし、その質量や性質はノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹(1907年~1981年)が1935年に提唱し、後に発見された“パイ中間子”に酷似していると予想されています。

宇宙には質量を持つ物体の周囲に発生する重力、電気や磁気によって生じる電磁気力、原子核のとても狭い範囲で伝わる強い力、弱い力の4つの力が存在すると考えられています。そして、これらの力は自然界の最小単位の粒子である素粒子によって伝達するとされます。

パイ中間子はクォークと反クォークという素粒子が、強い力を伝達するグルーオンという素粒子によって結合した構造になっています。そしてSIMPも、クォークにそっくりな素粒子と反クォークにそっくりな素粒子の間で、グルーオンに似た素粒子を受け渡す構造になっていると考えられているのです。

引用:https://phys.org/news/

これまでダークマターを構成する粒子は、互いに衝突することなく、通り抜けることができる性質をもつものだと推測されていました。しかしその考えに立つと理論的な計算から求められたダークマターの分布と、星の運動の観測から推察されるダークマターの分布に隔たりが生じてしまうのです。

一方でダークマターの正体がSIMPであると仮定すると、計算上の分布と観測結果から求められた分布が合致するといいます。SIMPには密度が高くなるとお互いがぶつかりあって散らばる性質があり、これにより局所的に過密になることがなく、観測結果と同様な分布になると予想されるのです。

またこれまで候補となってきたダークマターの正体は、超対称性粒子や異次元といったように日常の原理から距離のあるものでした。しかしSIMPは未知の粒子であるものの、特別な理論を必要とせずにダークマターを説明できる、という点でも注目されています。

 

コールドダークマターと銀河の誕生

銀河がダークマターに包まれているのは、星や銀河がダークマターの塊であるダークハローの中心部分でつくられたからだと考えられています。では、ダークマターはどのようにして銀河を生み出すのでしょうか?

宇宙が誕生した時、ダークマターと普通の物資が宇宙全体にほぼ同じように分布していたと考えられています。しかしほんの僅かな濃淡のむらがあったために、密度の濃い部分の重力にダークマターが引き寄せられていき、ハローという塊をつくったと推測されているのです。

そして小さな軽いハロー同士が合体することで、大きな重いダークハローが形成されていきます。塊が大きくなる程重力は強くなっていき、ハローは周囲にある物質を引き寄せて一層大きくなっていったと考えられます。これが宇宙の誕生後、1億年程度の時点のことです。

ダークハローの中には水素などの物質が高温の希薄なガスとして全体に広がっていたと考えられます。このガスが電磁波を放出しながら冷えていき、中心部に集まり、宇宙誕生から数憶年以内にはダークハローの中心部の濃縮されたガス雲の中で、第一世代の星・ファーストスターが誕生したのです。

そして宇宙誕生から50億年以内には、ダークマターのむらが泡構造の形になっていき、そこにたくさんのハローができて銀河が作られたと考えられています。

宇宙誕生から138億年後の現在、宇宙は銀河の多い部分と何もない空っぽの部分(ボイド)がある泡構造になりました。このことから宇宙が現在の構造になったのはダークマターが存在したためであり、シミュレーションによればダークマターが宇宙に存在しなかった場合、星や銀河が形成されるにはもっと時間が掛かったと考えられているのです。

つまり、私達が今存在しているのもダークマターのおかげだとも言えます。このことからダークマターは宇宙の母、宇宙のゆりかごとも呼ばれているのです。この理論はコールドダークマターモデルと呼ばれます。

 

ダークマター検出に向けての取り組み

望遠鏡では観測することができないダークマターの情報を得るために、様々な取り組みがされています。現在行われている実験の中から、LHCとXMASSという大規模な装置を使用した、代表的なものを紹介していきます。

 

人工的にダークマターを作る挑戦

ダークマターを探る研究の中では、人工的にビッグバンを再現して、ダークマターを生み出す試みも行われています。この実験では、具体的にニュートラリーノをつくる試みがされています。

引用:https://newspunch.com/

現在、ニュートラリーノを発生させる装置として最も期待されているのが、スイスのジュネーブ郊外の地下に設置されているLHC、大型ハドロン衝突型加速器という巨大実験施設です。LHCは、2012年にヒッグス粒子とみられる新しい素粒子を発見したことでも話題になりました。

1周が27kmの円形の施設であるLHCの内部では、ほぼ光速にまで加速した陽子同士が正面衝突をさせることが可能です。この衝突による衝撃はすさまじく、衝突地点はビッグバン直後の高エネルギー状態に近いといわれています。

宇宙初期には、このエネルギーを使ってダークマターのような重たい素粒子もつくられたと考えられているため、この加速器内でビッグバンの状態を再現すれば、ダークマターも付随して誕生すると考えられているのです。

生成されたダークマターは、測定装置を通り抜けることが予想されます。しかし同時に発生したその他の粒子を観測することで、ダークマターが生成された証拠を捉えることができる可能性があるといいます。

 

ダークマター検出装置・XMASS

宇宙を周回する星団の中には、確かに追加の重力が働いているように見えるのにもかかわらず、ダークマターを全く含まないかのような銀河も存在します。しかし私達の住む天の川銀河は、ダークマターが全体にも満ちていると考えられています。

そして天の川銀河の内部を移動する地球には、相当量のダークマターが常時降り注いでいると予測されています。それを検出しようというのが、岐阜県日高市神岡町の地下1000mに設置されたダークマター検出実験装置“XMASS”です。

東京大学宇宙研究所が中心となって建設したXMASSの本体は上の画像の通り直径約1mの球形で、その内部は約1トンの液体キセノンで満たされています。

地球に降り注ぐダークマターはそのほとんどが地球を貫通していってしまいますが、ごく低い確率で検出器中のキセノンの原子核と衝突することがあります。この時にキセノンが放つ光を検出器内に配置された642本物光センサーで捕らえることで、ダークマターの検出を試みるのです。

検出器が設置されている地下1000mでは、ノイズとなる宇宙線の量が地上の10万分の1といわれています。更に液体キセノン自体もノイズの遮蔽に有効であるため、検出器の中央付近では特にノイズの少ない観測ができるのです。

そのうえ検出器は800トンの水が満たされた直径10m、高さ10mの円筒型の水槽の中に吊るされているため、岩盤が発する自然放射線を遮ることも可能です。

XMASS以外にも原子核との作用によりダークマターの検出を試みる装置は存在し、代表的なものとしてはアメリカの素粒子宇宙物理学センターのCDMSⅡが挙げられます。

CDMSⅡではゲルマニウムの結晶とダークマターがぶつかったことで起こるゲルマニウムの温度の上昇と、衝突で弾かれた電子がつくる電流を観測することができます。

望遠鏡を使っても存在が確認できないダークマターですが、宇宙ではなく地下で検出される日は近いのかもしれません。

 

まとめ

存在を完全に証明できないため、ダークマターは2019年現在の時点でも仮説上の物質です。しかし手前にある銀河団の重力によって遠くからの天体の光が曲げられるために起こる重力レンズという現象を利用することで、80億光年先までダークマターと銀河団の分布が分かるともされており、ダークマターの存在しない宇宙モデルを考えるのは困難であるともいわれています。

また2018年にはダークマターを含まない銀河NGC1052-DF2が発見されたのですが、その質量が非常に小さかったために、見えている以上の質量を持つ天の川銀河やアンドロメダ銀河はダークマターを含んでいるという証明になったとも考えられているのです。

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