かつて、我孫子と沼南町を結ぶ渡し舟があったころ、毎日大勢のお客で渡し船は賑わっていた。
特に問題のある渡し船ではないのだが、毎年、お盆の前後になると、この「魔よけ小僧」が出没したという。
小僧の出現パターンはこんな感じである。舟の船首のところに素っ裸の小坊主が座っているというのだ。
「一体どこの小僧だろうか」「なんで裸でいるのだろう?」
小僧の突然の出現にみんなが大騒ぎになる。
ある人が決心して、哀しげにうつむいて座る小僧に話しかけても何も答えないと言う。これはどうしたものかと、お客達が困惑していると、静かに船を漕いでいた船頭さんがこういうのだそうだ。
「あれは『魔よけ小僧』と呼ばれる者である。昔からいるもので、縁起の良いものである。ほっておけば特に悪いことはしない。むしろ、小僧が出る事はこの船の航海が順調にいく印である。黙っておけ」
そして、舟が対岸に近づくとふいに消えてしまうのだそうだ。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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