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医者と患者が「笑いながら」進む脳手術が行われる!ただし大爆笑はダメ

Credit: Courtesy of American Society for Clinical Investigation
Point
■てんかんを患う女性患者が、大脳皮質の摘出手術を医者と談笑しながら行う「覚醒下手術」を受けた
■覚醒下手術は、患者と話すことで、活性化している脳の「言語野」を傷つけることなく手術できるというメリットがある
■意識のある患者をリラックスさせるために、医師は手術中「帯状束」という笑いを誘発する脳部位を刺激した

てんかん発作を患う女性患者が、医師と楽しく談笑しながら脳の手術を受けるといった世にも奇妙な外科手術が行われました。手術を行なったエモリー大学の研究チームはその過程で、意識のある患者に笑いを誘発し、リラックスさせられる脳領域を発見しています。

研究の詳細は、昨年の12月27日付けで「Journal of Clinical Investigation」上に掲載されました。

Cingulum stimulation enhances positive affect and anxiolysis to facilitate awake craniotomy
https://www.jci.org/articles/view/120110

「脳をいじりながらリラックスさせる」といった超難題

てんかん手術には、覚醒下状態で、発作の原因となる大脳皮質を部分的に除去するという方法があります。これには、患者と会話しながら「言語野」の動きを見ることで、言語機能を司る脳領域を誤って傷つけないようにするメリットがあるのです。

意識がありながら開頭手術を受けるなんて、想像しただけでも痛々しいですが、脳細胞には痛覚がまったくないため痛みはもちろん、触られていることも感じません。それでも、患者が動いてしまうと危険なため、従来の覚醒下手術では鎮静剤を使って患者を落ち着かせていました。しかし、鎮静剤がうまく効かないこともあり、そうなると患者はパニックに陥って頭を動かしたり、自分の脳に触ろうとしたりするのです。

「脳をいじられながらリラックスしろ」なんて方が無理難題。そこで、エモリー大学の医師たちは、患者を笑わせてリラックスさせるという手法を採用しました。もちろん、術中に医師がジョークを飛ばして笑わせるという原始的な方法ではありません。代わりに医師たちが着目したのは、「帯状束(cingulum bundle)」と呼ばれる脳領域でした。

帯状束は、大脳内部にある脳梁を包んでいる「帯状回」をさらにベルトのように覆っている繊維を指します。帯状束は「白質(white matter)」という脳細胞で構成されており、この部位が刺激されることで不安感情は緩和され、幸福感を生むエンドルフィンが発生するのです。

もちろん「大爆笑」は危険

長年の間、帯状束は筋肉をコントロールするための部位で、「笑い」もただ口角が上に引き上げられているだけで感情までは誘発されないと考えられてきました。しかし、手術を行なったジョン・ウィリー医師によると、帯状束は感情をコントロールする他の脳領域と連携する場所であるため、刺激することで患者を心理的にリラックスさせられるのは理にかなっているとのことです。

そして、手術中の女性患者を観察していた医師は「表情も穏やかで、医師に冗談を言う余裕もあった」と報告しています。もちろん、帯状束を刺激して起こる笑いは、あくまでも静的で落ち着いたもので「大爆笑」ではありません。帯状束を刺激することで大爆笑が引き起こされるとすれば、それこそ手術は笑えない事態へと発展してしまいます。

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reference: livescience / written & text by くらのすけ