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人類はいつのまにか海の生態系を操作していた。「鉄肥沃化」の真相

Credit: NASA; Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team

Point

■人間が放出した鉄粒子が、予想を遥かに超えて大量に海底に蓄積していることが判明

■人間の活動を由来とする鉄粒子は、従来予測されていたよりもずっと簡単に海水に溶け出している

■海底に蓄積されている炭素の量と、その効果の程度は定かではななく、鉄肥沃化には慎重にならざるを得ない

人類のフロンティア精神がひと目でわかる「世界のインフラマップ」

上がるものは必ず下がる—。

人間の産業活動によって生まれた鉄粒子も例外ではありません。大気中に放たれた鉄は、いずれ必ず海底に沈みます。

米サウスフロリダ大学のティム・コンウェイ、米コーネル大学のダグラス・ハミルトン両氏らによる最近の研究で、人間が放出した鉄粒子が、予想を遥かに超えて大量に海底に蓄積していることが分かりました。

しかも、思っていたよりずっと簡単に海水に溶け出しているみたいです。

Tracing and constraining anthropogenic aerosol iron fluxes to the North Atlantic Ocean using iron isotopes
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10457-w

鉄は、海中の植物プランクトンが生存に必要とする重要な栄養素の1つ。鉄の含有量が限られている海域では、人工的に海水に鉄を加えることで植物プランクトンの数を増やし、その海域の炭素吸収量を変化させる「鉄肥沃化」が行われるケースがあります

温室効果ガスを吸収した植物プランクトンは、やがて死骸となって海底に沈み、炭素を抱え込みます。このことによって気候変動にテコ入れをしようというのです。

ですが、鉄肥沃化が海洋生態系にもたらす影響は実のところよく分かっておらず、さまざまな物議を醸しているのが現状です。

今回の研究では、私たちが意図せずして「鉄肥沃化キャンペーン」をすでに開催していた可能性が浮上しました。

人間の活動が生んだ鉄粒子が予想以上に海に流出!?

研究チームは、自然源由来の鉄と、人間の活動によって生じた鉄の違いを、北大西洋の海水から採集した鉄粒子のサンプルの化学分析を通じて調査。両者は含有する鉄同位体の比率が異なります。

Credit: pixabay

大西洋の海水に含まれる鉄粒子の大半は、サハラ砂漠から風に乗って運ばれてきた鉄分が豊富な砂で構成されていると、長い間考えられてきました。これに対して、化石燃料の燃焼やその他の産業活動を含む人間の活動を由来とする鉄の流入は、比較的少ないと推測されていました。

ところがフタを開けてみると、人間由来の鉄の割合が、従来の予想を遥かに超えて高い可能性が浮上。しかも、自然源由来の鉄と比べて人間由来の鉄はかなり水に溶けやすく、お腹をすかせた植物プランクトンが食糧にしやすいことも明らかになりました。

これらの結果をもとに地球の海全体をシミュレーションしたところ、北大西洋以外の海域でも人間由来の鉄の流入が想像以上に進行していることが判明したのです。

海域の中には、他の海域と比べて鉄肥沃化への感受性が高い場所が存在します。たとえば北大西洋では、植物プランクトンの成長は鉄以外の栄養素によって制限されがち。このため、海水に鉄を加えることで生じる効果はそれほど大きくありません。

それに対して、赤道付近の太平洋、北太平洋、南氷洋などでは、鉄が植物プランクトンの生育を制限する要因となっていることが多いです。こうした海域に鉄が流入し、しかもそれが水に溶けやすいとなると、植物プランクトンが急増する可能性は一気に高まります。

謎に包まれたままの鉄肥沃化の真の影響

アジア大陸や南半球で起きている産業化の影響で大気汚染が進行すれば、鉄の流入がもたらす影響は今後ますます顕著になるといいます。

まずは、現場での観察を通じて、北大西洋以外の海域でも人間由来の鉄の比率が高いことを実際に立証することが先決です。その後は観察を継続的に行い、これらの海域に植物プランクトンの増殖を含む生態学的変化が起きているかどうかをつぶさに見ていく必要があります。

しかし、こうした変化が鉄肥沃化の進行によって起きているのか、または気候変動による海洋温暖化などの他の要因によってもたらされているのかを判断することは、なかなかに難しいことです。

Credit: pixabay

実際、海底に蓄積されている炭素の量と、その効果の程度は定かになっていません。たとえば、南氷洋の鉄肥沃化によって吸収される温室効果ガスの量は年間約1ギガトンであるのに対し、この領域で毎年排出される温室効果ガスの量は11ギガトン。つまり、排出量の1割程度しか吸収されておらず、温暖化の根本的な解決は望めないのです。

それに加えて、鉄肥沃化が海洋生態系へもたらす真の影響が明らかになっていないとすれば、人工的に鉄肥沃化を進める計画には慎重にならざるを得ません。

研究チームは現在、海中のプランクトンの生産性のモデルシミュレーションを改善し、海洋化学に生じる変化が海洋システムへどう影響するかを調べる計画を立てています。

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reference: scientificamerican / written by まりえってぃ