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不幸をもたらすキノコの怪〜〜食べるな注意! キノコのお化け 其の二/黒史郎の妖怪補遺々々

妖怪補遺々々(ようかいほいほい)

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 連載第50回は、前回に引き続き、危険なキノコの怪を補遺々々します。

 

怖いキノコたち

前回はどこか抜けていて、愛嬌さえある茸(きのこ)の化け物たちでした。

今回はちょっと怖い茸たちのお話をご用意いたしました。

これは愛知県南設楽郡横山(現・愛知県新城市)で、ある女性の身に実際に起きたとされるお話です。

 

朝、いつものように爐(いろり)を焚きつけようと灰を掻きますと、灰の中から見たこともない茸が出てきました。

前の晩にも焚いていたのに……。

女性は驚きましたが、このことをだれにもいわず、茸を取り捨てて火をつけました。

それからなぜか、1日中、胸騒ぎがしていました。

そしてその日の暮れ方、彼女のもとに悲しい報せが届きます。

川狩(川で魚を捕ること)に行っていた2番目の息子が、流れてきた材木に巻き込まれて死んでしまったのです。

 

爐の中の茸は、不幸の兆しだったのでしょうか。

 

次は『真佐喜のかつら』三巻に見られる、ゾッとする「恨み」の話です。

 

舞台は相州高座郡田名村(現・神奈川県相模原市田名)。

あるお百姓さんが弟を連れて、秣(まぐさ・牛馬の飼料の干し草)を刈りに行ったときのことです。

作業後、疲れたので木陰で休んでいますと、兄のうなじのあたりを大きな蛇が這い、そのまま草の中へと入っていきました。兄はこれをすぐさま竹で打ち叩き、死にかけの蛇を縄で括って木の梢から吊るし、その日は帰りました。

 

月日が経ち、そんなことも忘れていた、ある日のこと。

兄弟で同じ場所へ秣を刈りに行きますと、そこに大きな茸がたくさん生えていました。

これをとって家に持ち帰り、兄弟と母の3人でその晩に食べますと、突然、兄が激しい痛みに襲われ、苦しみだします。すぐ医者にかかりましたがその甲斐もなく、兄は死んでしまいました。

 

しかし、なぜでしょう。同じ茸を食べた母と弟にはなにも異変がないのです。

このことを怪しんだ母は、弟と共に茸の生えていた場所へ行きました。

「そういえば……」

弟は〝あの日のこと〟を思い出し、母に語ります。以前、兄がここで蛇を半殺しにし、木から吊るしたことを、です。

母が見上げますと、そこには蛇を括った縄だけが残っていました。

蛇の恨みが木の下に滴り落ち、土に茸を生じたのでしょうか。

 

それは兆しか秘薬か

『本草綱目』にはさまざまな茸について書かれています。その中の【千歳芝】は、とてもすごい力をもった茸です。これは、枯れ木の下のほうに生え、座っている人のような形状をしています。この茸を刀で刻むと血が出るといわれ、その血を人が両足に塗ると水上を歩くことや姿も隠すことができ、病も治せたそうです。

 

家の柱に理由もなく生える茸は、不吉なものが多いようです。どんな意味で不吉なのか、その答えは色に現れているといいます。白色は喪を、赤色は血を、黒色は賊を、といったように物騒な事ばかりをつかさどりますが、唯一、黄色だけは歓びをつかさどるといわれています。

また、【人面の茸】が生えれば財産を失い、【牛馬に似た茸】が生えれば、その家の者には僻地で重労働が待っています。

【亀、蛇に似た茸】が生えると、その家では蚕(かいこ)が育たなくなってしまうそうです。

 

こんな珍しい茸の話もあります。

敗戦が近いころのお話です。群馬県富岡市一ノ宮にある、一ノ宮貫前神社の境内にはご神木の欅(けやき)がありました。

この木に蛙(かえる)の形をした茸が生え、神木に宿る軍神が負け戦に怒って現れたのだのだといわれ、近くに住む小学生たちは教師に連れられてこれを見にいったといいます。

不思議なことにこの茸、大きな戦果があると大きくなり、玉砕などの悲しい報せがあると小さく萎んだといいます。

また、敗戦直前には、蛙に蛇が巻きついた形になったといわれています。

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<参考文献>

早川孝太郎「湖底の金 ——設楽雑談——(承前)」『旅と伝説』十一号

柴田宵曲編「爐の中の茸」『随筆辞典4 奇談異聞編』

中島恵子「現代の世間話」西郊民俗談話会『西郊民俗』第二十五号

寺島良安『和漢三才図会 18』